実はマーモン大好きなんだ 
「マーモン!」

小さな子供を抱きしめた。
…いや、小さく見える子供を。

「無理しちゃだめだ!何でこんなこと…!」
「ツナヨシ…。やっぱりツナヨシには効かないね。」

もうちょっと誤魔化せると思ったんだけどね。
呟いたマーモンが倒れ込んでくる。
幻覚は徐々に消えていき、小さな赤ん坊は十代中頃の少年の姿になる。
急いでバリアの張られた防護室に運ぼうとするが、俺よりも背のある意識のない体を運ぶのに手間取ってしまう。

「どいてろぉ。どこに運ぶんだぁ?」

目を見開いて驚いていたヴァリアーの中、スクアーロがいち早く復活し、マーモンを背負ってくれる。
急いで防護室まで案内した。



マーモンの手を握って目覚めを待つ。
急に成長させられた体はあまりにも細いが、それでも十代中頃の少年のもの。
他のアルコバレーノの子供たちよりも大きく成長した手は症状の進んでいる証拠だ。

恐かった。
この手を、この子供を失うことが。
この子供と共に生きていけなくなることが。
怖くて怖くて、悲しすぎた。

目許がつんと痛んで涙が出てくる。
なんて最低な自己愛の涙だろう。
止めようとしても止めることができなかった。

「ツナヨシ…?」
「マーモン!」

マーモンの閉ざされていた瞳がゆるゆると開き、俺の名前を呼んだ。
握っていた手の力を少しだけ強めて名前を呼べば、弱々しい力で手を握り返される。

「泣かないでよ。平気だから。」
「平気なわけないだろ!自分の顔見てみろ!真っ青だぞ!!」

騒ぐ俺にマーモンが目を細める。
体調の悪い者の前で大声を出し過ぎたかと慌てかけて、マーモンのいつもへの字下げられている口の端が上がっているのを見て落ち着いた。
何笑ってるんだよ、マーモン。

「ツナヨシ、まだ泣くの?」
「…泣かないよ。」
「僕を騙そうだなんて100年早いよ。」

騙すのは霧である僕の専売特許なんだからね。お金取るよ。
相変わらずの発言をするマーモンの顔にかかっている髪をそっと梳いてのける。
普段はフードに隠されてしまっている髪に触れる機会は少ない。
気に入ったのか、マーモンは瞳を閉じて笑みを深める。
しばらく何も言わずにゆっくりと撫でるように髪を梳いていると、ぽつりと呟くようにマーモンが言葉をもらした。

「僕はね、ツナヨシ。死ぬのは怖くないんだ。」
「マーモン…!」
「怖くないよ。痛いのは嫌だけど、人は死んだら同じ生を繰り返すんだからね。」

目の前が霞んで見えなくなる。何も言えずにただマーモンの言葉に耳を傾けた。

「僕はまた生を受けてバイパーと名付けられて、最悪な呪いをかけられて、どさくさまぎれてマーモンと名前を変えてヴァリアーに入るんだよ。」
「そこで荒稼ぎしたり、ボスに怯えたり、ベルと賭けたり、スクアーロとレヴィを騙したり、ルッスーリアに呆れたり、…君に出会ったりするんだよ。お金にならないつまらないことも多いけど、そこそこに稼げるし、まあそれなりに楽しいよね。」

俺はもう声も抑えることが出来ずにみっともなく泣き続ける。
マーモンの名前を繰り返すものの、もはやそれは形になっていなかった。

「それを繰り返すんだったら別にいいと思ってるんだよ。そのはずなのに…。」

マーモンが言葉を切る。
俺は次から次に流れてくる涙を必死で拭いてマーモンの表情を見守った。

「……まだ、死にたくないよ、ツナヨシ…!僕は、まだ君たちと生きていきたい…!」
「マーモン…!」

絞り出すようなマーモンの言葉とその表情に、胸にぎゅっと握られたような痛みが走る。
俺は痛みに耐えるように目の前の少年を抱きしめた。
懐に寄せた確かな暖かい温度に生を感じて。
感じたまま、決意する。

『失ってたまるものか。奪われてたまるものか。』

ミルフィオーレ。
俺から可愛い虹を奪おうとした罪は重いよ。



さあ、覚悟してもらおうか。


 
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